2009年1月17日土曜日

買い物が止まらない

2年ほど前にMA-1というジャンバーを買い換えました。

あ、ちなみにMA-1というのはベトナム戦争の頃までアメリカ軍の航空機パイロットに支給していた、搭乗時に着るための防寒ジャンバーです。現在は防寒の為というより耐火性能を重視した物に切り替えられています。

なかなか長持ちしてくれた奴で、途中捨てようかと思ったこともあったりしたけど、なんとなく勿体無くてそのまま着続け、とうとう20年の御年を迎えることになってしまいました。

買い換える(とはいってもまだ椅子の背もたれにかけてある)きっかけはウチの柴犬ペロ輔のいたずらです。とにかく子犬の頃はあちこちガジガジかじっていてそのうちこのMA-1の袖のニットが餌食になってしまったというわけです。さすがに袖がヨレてしまう様を見て嫁さんに「いい加減換えたら?」と言われてしまいました。

とはいいつつもこれに特に不満があったわけでは無いので、つぎもMA-1で良いやと調べ始め、とあるものを買ったはいいのですが、それをきっかけにフライトジャケットを買いあさる癖がついてしまい、未だにこれが止まりません。困ったものです。

最初に買ったのはバズリクソンズというメーカーのMA-1でした。久しぶりに買った新品のMA-1はこれでもか、というくらいに分厚く「これが本物だぜ」という雰囲気をぷんぷん漂わせる逸品でした。

基本的に柴田は手荷物というのが大嫌いです。普段は仕方なく鞄なんぞを手にしていますが、特に持ち歩かなくてはいけない書類さえなければ、とにかく手ぶらでいたい人間です。もちろん最近は余計な書類は持ち歩くな(個人情報流出を防ぐ目的の為)というのが保険屋の常識ですから、これに倣いパソコンを持ち歩くことも殆どしません。
ただ、困るのがお客さんの先々で保険屋の顔とクルマ屋の顔を縦横無尽(というほどでもないけど)に使い分けるのでスーツの上下では少々やりづらい事態も生じてきます。このため最近は下はスラックス上はYシャツにネクタイでも、その上はジャンバーを羽織ることが多くなってきました。靴はもう面倒くさいのでスニーカーで行く事が殆ど。ただ、あんまりぱっと見に変でもいけないので黒いもの(大概はナイキのfreeシリーズ)を履いています。
ジャケットを着なくなると困るのが、小物類の収容場所です。財布に手帳、電話などなど。こんな具合ですからポケットの数が多く、大きさも余裕があるMA-1はとても重宝するのです。

そんな訳でMA-1を買ったのはいいのですが、バズリクソンのMA-1は逆に良すぎてしまいました。つまりは品質や質感が良すぎて、却って普段着ていくには気後れしてしまうのです。このためバカな話ですが、普段使い用に、もう少し安めのヒューストンという所(自衛隊員に支給する為の官給品を納入している会社らしい)が作ったMA-1を買い足しました。これが後に更に尾を引く事態を引き起こすことになります。
この安いヒューストン製を手にしたことで「あ、ここのこういうところでコストの差があるのか」という値段の差の理由を明確に把握していけてしまう特典を手にしてしまったのです。
例えばファスナー。バズリクソン製ではファスナーの歯の材質にアルミ鍛造品を使っています。ヒューストン製はおそらく真鍮プレス品。もちろん、オリジナルのMA-1では「軽い」ということでアルミを使ったのでしょうが、更に鍛造製品ということでエッジが適度に丸くなっており、バズリクソン製のファスナーは非常に滑りがいいのです文字にするとシュルシュルって感じ。これがヒューストン製になるとエッジが立っているせいか、ガジガジ・・・という感じでファスナーがしまっていきます。また、このエッジのせいでしょうけど、ファスナーの歯が生地に触れる際に少々かじってしまうのか毛羽立ってしまっている所があります。かえってプラ製の歯の方が良かったのかも?と思ってしまうくらい。
その他には生地ですとか。特にその染めなのですが、近年の糸の染色は反応性の染料で染めます。利点としては非常に均一に染まるのが良い、ということなのですが、逆に生地の表情に乏しい物となってしまいます。昔は染料の入った圧力釜に生地を入れ、120度で3時間煮るなどといった工程だったため、悪く言えば染まり具合に斑が出来ることもあるが、織りあがった状態の生地の表情が豊かになるということもあります。例えば藍染の生地などがいい例でしょうか。
で、やっぱり昔の染めでやっているらしいバズリクソン製は表情が豊かな生地となっています。比べるとヒューストン製は均一すぎてのっぺりとした感じ。

こうなると、変に目が肥えてきてしまうので、他の衣料も「きちんとしたつくりや材質の製品」が欲しくなってきてしまいます。とはいっても一定品質以上を求めてしまうと価格も一定金額以上となってしまいます。例えばこれ以降に買った防寒用のフード付・ハーフ丈のジャンバー(結局これも軍用品のレプリカでN-3Bというタイプを選びました)が約10万円。革ジャンバーが約13万円といった具合です。もちろん定価で買った訳ではありませんが、それでもそれなりの金額は払いました。とっても満足はしていますが。

困るのは、こういう品物を置いてあるお店が浜松には非常に少ないということです。
まあ、当然店側としては在庫が残っては困るでしょうから、ある程度売れそうなものしか仕入れません。つまり見栄えのいい「安い」物が主流になります。これは結局「どこでも売ってる、何時でも手にはいる物」ということに他なりません。
仮にそういう「一般的でない」品物を売っているお店に行っても、更にそこから柴田サイズに適合するものがあるのか?というハードルが待ち構えています。こうなると先日見に行ったアクアスキュータムのトレンチコートもそうですが、仮にお店は在ったとしてもサイズがない。もしくは全国に1着しか在庫がない、ということも1度や2度ではありません。つらいところではありますが。

こうなると、本当に欲しかったものなら「あるときに買っちまえ」という事になりがちになってしまいます。どうせこの先、早々巡りあうものではないんだから。
また、昨今の景気状況は世の中の品物を「安いもの」主導にしつつあります。別に安いものでも構わない事柄や物もいっぱいありますが、ちょっと気を抜くとそれは「貧相」と紙一重になってしまうのが怖いところです。で、そこには落ちたくない。やっぱり人間見た目で判断されますしね。

ということで、「これは・・・!」とか思っちゃうと買い物が止まりません。
誰か何とかしてください。嫁さんに怒られるのが一番という説もありますが。

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