2008年1月14日月曜日

モデルチェンジのココロ

セールス、というか営業に携わってきて、どうしたものか、と思うのは、「どこまで自分の意見を出したらいいのか?」という境界線です。

今日も、とあるお客さんの所にいってきまして、クルマの話をしてきたのですが、あれこれお話をさせていただいているうちに、ふと「柴田さんなら、どれを買うの?」と、真顔で聞かれてしまい、結構どぎまぎしてしまいました。
どこまで本音を言ったらいいものか、と思ってしまうんですよね。もちろん、自分がお金を出すわけではないし、自分の好みをあまりにもはっきり言ってしまって気分を害されても嫌だし。
かといってあちらを立てればこちらが立たず、という事になりがちですから、結局のところ何を言っているのか分らなくなってもしまいます。まあ、そのまま言っちゃうと、今回、お客さんがお考えになっている車はフィットなのですが。

フィット自体は説明の必要もないほどに、爆発的に売れたホンダの看板車種です。今回そのフィットが初のモデルチェンジを行いました。ホンダにとってこれはかなりの試練であったろうと思います。だって、今までは誰かの後を着いて行けば良かったメーカーだったはずですが、先代のフィットはあろうことか「カローラ」の月間販売台数を一時的にではあるにせよ抜いてしまったクルマです。
まあ、そんな所はともかく、今回のフィット。いたるところに消化不良の跡が僕には見え隠れしているように見えてしまいます。失敗できないが故のプレッシャーが相当あったんだろうな、と思うのですよね。つまりプロダクトとして突き抜けたところ、素直な印象を感じない。
先代フィットには、そういった重圧はありませんでしたし、「ウチとしてはコンパクトカーをこう作る」という明確な、そして、のびのびとした所がありました。それが、非常にクリーンな印象のする清々しいプロダクトになったと解釈しています。

確かにモデルチェンジを受けると、先代の不具合点や品質面での欠点は修正されてきます。ところが、2代目以降を出すというと、それがルーチンワークと化してしまい、それに伴いプロダクツとしての志が失われていく例は少なくないように思います。プリウス然り、エスティマ然り。思いつくだけでもセルシオ、MR2、ED、イプサム、ハリアーなどなど。他メーカーも含めてその他たくさん。オデッセイとかもそうですよね。
そんなわけで、お話しは最初に戻るのですが、どうもすっきりとフィットを勧める気になりません。それならばいっそ、新車だけでなく、中古車という選択肢も含めて、「フィット」というコンセプトが気になるのであれば、いっその事、先代フィットをお勧めしたい気分なのです。追い金も少なくて済みますしね。

10年モデルチェンジしない、という事を標榜しているクルマというと「マーチ」(現マーチが、それほどの完成度を誇るプロダクツであるかどうか、という事はここでは措くとして)がありますが、先代フィットも10年はそのまま作ります、という事を言ってもよかった製品だったような気がします。R32スカイラインも、当時は「10年モデルチェンジしない」といっていたらしいですが、やらなくてもいいものなら、そのまま作る、というのも勇気ある判断だと思うのですがね。
よくコンピューターの分野では、「Ver.○○」という言い方がありますが、クルマもよく売れている型であるなら無理に「Ver,2.0」を目指すより「Ver,1.2」とか「Ver,1.5」とかで抑えておいて、より完璧な「Ver,2.0」を目指す、というようにならないかな。ならないだろうな。

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