ここで一つ、取り扱いに悩むのが「事故車」でしょう。
私は査定員の資格を持っていました。もちろんディーラーの営業であれば誰でも持っているはずの資格ではあります。過去形なのは「資格更新をしなかった」ので、今は査定員の名簿に入っていないということです。
まあ、それは置いておいて。その中古車査定基準においては、事故車という事に関しての明確な規定はありません。
ただ、おそらくそのことを言いたいであろう項目として「連続するねじ止め外板の交換」とか、「溶接留めの外板の交換」歴のあるクルマに対し「外板価値減 点」を適用します。また「自動車の骨格等に欠陥を及ぼしたもの、またその修復歴のあるもの」には「修復歴減点」と呼ばれる減点をします。これらがいわゆる 「事故落ち」と呼ばれる減点です。
確かに原則論から言えばモノコック構造が主流で、衝撃吸収設計をしている今時のクルマは、当たれば全体的な歪みは出るでしょう。ただ、それが一般の方に分かるレベルなのかな?という事も思います。もちろん程度の大小にも因りますけどね。
主要骨格部分はある程度まではいいとしても、車の先端部や後ろは以前と比べて潰れやすく作ってあるので、実際ラジエータコアサポートなんてところは、フロ ント部の接触ともなればすぐ触る所ですし、そこが修正なのか交換なのか、と聞かれると悩む所ではあります。触っていることはすぐ分かるんですが。
もう一つ、この「査定」という行為自体はあくまでもクルマ屋さんの仕入のためにある制度であって、一般の方からすると果たしてどうなの?と思わなくもありません。つまり、仕入れのときにケチが付けられる所はつけておいて、より安く仕入れるための口実としている、という側面もあったりする訳です。この査定制度・査定基準というものは。
実際、この査定基準というものは保険会社サイドではほとんど認知されていません。あの時は「あい○い」が相手でしたけど、とぼけられたのか、本当に知らな かったのかは知る由もありませんが、損害額認定の時の判定基準がどうも私の感覚とズレていました。このため「普通、車の価値判断では日本自動車査定協会の 協会基準を元に算定をするのがクルマ屋の常識ですが、あなた方の判断基準の根拠を示して欲しい」と言った所「ウチの独自基準で、いつもこれでやらせても らっています」という回答でした。
ちょっと余談になりますけど、修理を「した・しない」よりも保管状況によっても車の状態は大きく異なりますし、何より修理をしたにしても、きちんとした手順や段取りを踏んだ、きちんとした修理ならば、新車塗装と同レベルの仕上がりにはなるんですけどねえ。
ただ問題なのは「鈑金修理に関してはキチンと3割以上抜こうとする」ディーラーの下請け基準とか、「そういう金額で仕上げなければいけない」修理屋さんの台所事情とか。その他、妙に低い算定基準の時間工賃や標準作業時間の設定であるとか。そういうところなんですけどね。
で、結局そのツケはユーザーが支払っているんですけどね。
話を戻して。
ただ、困るのは、事故というイメージだけが一人歩きして、同時にこの「修復歴」という言葉も独り歩きしているような感があるということです。つまり「直し てるんでしょ?」と、そのことだけがクローズアップされてしまい、別に気にしなければ、どうという事でも無い事に関しても、妙に神経質になってしまってい る。
新車ならば、「ここが、あそこが」と言われてもある程度までは止むを得ないとは思いますが、ヒドイ事故歴車ならばともかく、軽度の損傷歴ならばそれは仕方ないだろう、と思うのですがね。どうせ中古なんですからもっと大らかであってもいいと思うんですが。
もっと積極的な姿勢を取るとするなら、「その分安くしてくれれば、その分安く買えるんならそれでいい」くらいの姿勢の方が中古車を楽しめるような気はします。
ただ、世の中には「事故車専門(しかもそれほど軽微ではない修復歴)の中古車屋さん」も存在していることも事実です。私なんかが見ると「あーあ」と思うのですが、そこはそれ、見慣れない人は「まあ安い」となってしまうようです。
あまりに潔癖すぎる世の風潮の弊害というような気もしないでもありませんけどね。
あ、そうそう、最後になって思い付いたことを。
中古車買うんなら「安く買える」ことに感謝して、予算の上限いっぱいで購入価格を考えるよりも、2~30万円安く買えるクルマにしておいたほうが「心の余裕」が違います。そうしておいた方がいいです。いっぱいいっぱいだと気持ちにゆとりが持てません。
御参考になさってください。
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