新車開発において、クルマの基本設計や仕様・生産性などをチェックしつつ最終の煮詰めになって、最後に待ち構えているのがセッティングと呼ばれる最後の詰めの作業です。
もちろんその頃まで行ってしまえば車体ディメンションは基本的に変更のしようがありませんから、彼らテストドライバー達によって仕上げられる最後の余地はタイヤ特性の調整とアライメント調整となります。つまりは足回りの調整ですね。もちろん、実際に走ってみた具合による異音のチェックや気になる特性の洗い出しもあるのですが、最終仕上げは足回りのセッティングを決める、という事になります。
足回りは微妙です。サーキット仕様ならばそれに特化した特性もありでしょうが、市販車としてそこを目指すのは非日常を追うという事になってしまいます。日産GT-Rなどはサーキットを主に、多少は日常を気にしなくも無い、という割り切ったセッティングでしょうし、ユーザー層も「なんとなくそういう雰囲気を愉しむ」というそうでしょうからある程度割り切ることが出来るでしょう。
けど、一番困るだろうな、という車種は所謂「スポーティーカー」でしょう。
例えばうちのロードスターはオープンカーという事で、見た目は非常に気持ちいい車ではありますが殊こういう季節の日中にオープンで走ろうなんて奴は笑いものになりかねません。なぜって、暑いから。
バイク同様、走っている最中はまだマシとしても、ちょっとでも渋滞し始めると太陽からの放射熱を地肌で感じつつ暑さにあえぐ、という事態になります。タイヤが4つあるバイクという表現が適当かもしれません。オープンカーこそエアコンが必需品という訳の判らない事態もなんとなく理解できてしまうのです。
ただロードスターが幸せだったのは、そのユーザー達が割り切って乗っていた人が多かった、と言う一点です。オープンとはそういうものだと割り切って乗ってくれた人が多く、なんだか乗り心地が悪いだのギシギシいうだの、雨漏りがとか、幌が、とかいうネガティブな面に理解がある方々が大多数だった、という事ですね。これがトヨタ車だったとしたらこうはいかなかったでしょう。事実、コペンユーザーの中には「150万円で、電動オープンの車を販売してくれている」という事をメーカーに感謝してくれているユーザーは思ったほど少ないようで、けっこうな数の些細なクレーム「異音がする」「せまい」「乗り心地が硬すぎる」etcがあるようです。
そう思うと、日本車のスポーティーカーがそのキャラクターとしてGT系への道をたどっていった、というのは必然だったのかもしれません。例えばソアラとか、マークⅡのツアラー系・クラウンアスリート系といった系譜ですね。
現行ロードスターにRHT(リトラクタブルハードトップ)仕様があるというのも、そういう流れの中のひとつと理解をしています。初代ロードスターは「低価格でこういう車を提供する」という思想の下での潔ぎよすぎる割り切りの下で開発され、2代目は初代を下に熟成(車体剛性の向上や実用性の向上など)の系譜をたどりました。3代目は普通に乗れるオープンカーという感じでしょうか。極力苦痛を感じさせない、というか。設計技術やコンピューター支援・シュミレーション技術の向上などによって様々な要素の妥協点が非常に高いクルマだと思います。もちろん否定的に捉えている訳ではありません。ただ、一つ言うならば「やはり初代のデザインが好き」というのはあるんですけどね。
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