2009年2月17日火曜日

被害者の立場

交通事故で被害者の立場になるのはおもしろいことではありません。

先ず第一に、止まっているときに当てられたとか、対向車線をはみ出してきた対向車と接触したなどといった「どうやったら避けられるんだ」という状況でない限り、ほぼ確実に過失割合上、相手方が完全に100%悪いという決着とならないこと。ほぼ全ての事故に関して、基本的には被害者の側にも20%の過失が認定されてしまっているのが現実です。
曰く「交差点は基本的に徐行運転義務がある。また、仮に相手側が一旦停止義務があったとしても、それでも車が来るかもしれないと危険を予知しつつ運行しなければけない」ということなのですが、それはそれとして、どうも納得がいっていません。個人的には一旦停止無視などは「アンタ勝手にこっちの通行を邪魔しておいて、それでこっちにも2割の過失があるたあ、どういうわけだ?!」と思っています。はい。

第二に面白くないのは、過失割合が出ているということは、相手側の損傷をこちらで多少は見なくてはいけない、ということです。つまりは勝手に突っ込まれた状況だとしても、相手車の修理費の2割は請求書が自動的に届く訳です。ほとんどの場合、この過失分は保険を使って対処をすることになりますが、それはそれで保険等級(割引等級)が翌年3等級落ちるわけですから、これも面白くありません。
代理店(僕以外の人)の人にいわせれば「2割は道路上で自動車を運転する上での基本責任分。逆の立場にあったら、こちらは加害者側であっても2割分の請求はするんですよ。」と言われると納得出来るような
出来ないような感じです。

これは余分な話になりますが、自身が加害者の当事者(今回のような一旦停止無視とか、余所見による接触)であった場合、自身には弁解の余地はない、と思っているので、自分自身の事故処理ではそういう姿勢でいきます。
相手の言い分は極力聞き入れ、基本8:2であっても極力こちらの過失按分を認めていき、例えば9:0とか9.5:0とかの保険会社の認めるレベルでの過失按分で妥結します。そして、足の出てしまった相手修理車の修理費を修理工場に直接持ち込むことで10%とか5%だけ値引きしてもらうのです。

基本的に、保険修理は、特に部品などは定価で保険会社に請求します。工賃に関しても以前書いた時間工賃のレートが高すぎなければ、マアマアそれで通ります。それでもディーラー工賃レートと修理工場直のレートの違いはあるようですが。
特に「ディーラー経由修理工場ゆき」修理の場合は無条件で最低3割工賃がカット(つまり修理工場の手間賃の内3割がディーラーの取り分として上前をはねられる)されます。部品なんかもディーラーから買えとかね。ディーラーによっては3割どころか4割抜くところもあるようです。つまりは、仕事を出してんだからその分寺銭(場所代)よこせ、ということ。売上的には、ただ受けるだけ(見積は作るにせよ)で数十万円になることは珍しくありませんし、利益率が部品台2割、工賃3割としてもザラで3割弱は見込めるわけですから自身は手を汚さずにそこそこの数字になる仕事です。
ということで何が言いたいかというと、鈑金仕事はそれだけ利益を出している仕事なので、1割程度の値引きになら応じないはずがない、ということです。もちろん鈑金工場直ならば、喜んでそれに応じてくれるでしょう。
但し、この示談をしようとするときには、被害車輌の修理をこちら側で行うことを相手側に了承してもらわないといけません。まあ、普通にいったらなかなか難しいことではありますので、いつでもこれができるという訳ではないんですけどね。

第3に面白くないのは、自身の車の修理費に関してです。車両保険に加入されていない人は、ここでまた一悶着あります。
こちらの過失分2割を自分の対物保険で支払うならば、同時に自分の車を直すのに車両保険を使っても翌年度の割引等級ダウンは変わりありません。同じ3等級ダウンで痛みは同じです。ただ、車両保険に入っていない人はここでまた自分の車の修理費の2割分を自弁しなくてはいけません。
ここで先ほどのように修理工場に直接持ち込むのならば「なるべく修理見積を膨らませておいて、実際の請求は中古パーツなどを使って極力抑える」などということもしますし、見積上の額面の2割程度の金額ならば吸収しきれないこともないでしょう。ですが、仕事のシステムをきっちり組み上げすぎているディーラーなどは杓子定規にやってきてくれる(というか、そういうことをすると自社の利益率が下がるので、そういうことをやらなくなってきている)ので、どうにも融通が利かない場合が多いのが困るところです。
こちらとすれば被害者側の経済的損失が極力出ないことを最優先に考えるのですが、修理を受けたディーラーとしてはあくまで「修理依頼を受け付けた」だけですからねえ。

それともうひとつ。最近のディーラーは代車を持っていません。
例えば車検なんかでも「1日で車検が終わります」とか「45分車検」とか言っているのは「代車を用意しなくてもいい(代車を用意する場合はレンタカー代が加算)」「引き取り納車にかかる時間と人手が省略できる」「引き取りに行く時間が省略できれば、その分他の作業をこなせる」「専任の車検チームを組んでおけばいいので、その分こなせる作業量が増え、来店型なので時間のロスが少なく、事前に予定が組みやすい」など、確かにディーラー側にとってはメリットはいっぱいあるように思えます。
このため、仮に鈑金修理であっても代車の用意はありません。あったとすれば、それは傘下の鈑金工場に供出させた代車です。「仕事を出すから、代車をよこせ」ということですね。

またちょっと話がずれます。保険契約に「代車特約」というものがあります。個人的には極力、この特約をつけてもらうようにしています。単純に言えば修理期間中の代車代をこれで補填するということなのですが、ただ、これを杓子定規にレンタカー代に遣ってしまうことには、あまり賛同しません。
特に年式の古いクルマが被害車輌であった場合、年式による時価が大きく問題になることがあります。つまりは「時価全損」ということを言われると車両保険で出てくる金額では修理が出来ない、次のクルマに移行するのに10万20万という単位で追い金が発生するケースが稀ではありません。それこそ「アンタが来なければ、うちの車は元気に今でも走ってくれていた」のに、なぜか強制的に車を換える羽目になり、追い金までふんだくられる、というわけです。
こういったケースの場合、この代車特約から見込める金額をプールしておき、次の車の代金の一部として充当する、もしくは修理金額の一部としてプールしておく、という手もありうるわけです。


話を戻します。このために、修理金額だけに留まらず修理期間中の代車まで要求されることもありうるわけです。自分なら面白くないことだらけです。

だから揉めるのです。

揉めるという事は、それでは納得できないということでしょう?では誰が納得できないのか、といえばほとんどの場合は被害者側だと思います。
自動車保険は基本的には賠償責任保険と傷害保険、それと自身の車両修理費用の保険をセットにした商品です。今現在では対人保険・対物保険の保障金額はほぼ「無制限」がデフォルトになりつつあります。賠償金額は無制限な訳ですから、加害者側であれば実際には「ごめんなさい」とひたすら謝っていれば(言葉は悪いですが)あとは保険会社側にお任せコースでいいような状態です。あとは現状復帰にかかる金額の算定が本当にそれだけでいいのか?という問題でしょう。
損保の代理店という立場だけであるならば「事故ってそういうもん」というスタンスでいいのでしょうけど、僕は「クルマ生活の支援者」という立ち位置がその出身です。「事故による保険会社からの支払い金額でどのようにして現状復帰させるか」ということが主目的なのです。で、こういう目でいると、やはり「不十分じゃないの?」と思わざるを得ません。


この辺が保険会社に対する不信の根っこであるような気がするのですが、どんなもんでしょう?

それが、どうせ払うのなら「安い保険料の保険へ」という流れになっているような気がしています。ただ現実には「保険料を取られるだけの保険」に契約者が流れているだけのような気がしていて、結局は通販系やカタカナ系損保の手のひらの上で踊らされているようにしか思えないんですけどね。

通販系で受け付けている「30歳以上、ゴールド免許、割引等級16等級以上」等といった契約者は一般の損保にとっても「ドル箱のお客さん(事故をする確率が通常低く、このため保険料が丸々収入となる確率も高い)」であるはずですから、なんとしても契約者の流出を抑えたいという保険会社の気持ちも分からなくもありません。それが「早期の満期契約の更改率」や「キャッシュレス(保険料の口座引落し率を上げて、お金は後で、契約は先に、とする)」ということを代理店に躾けていく施策の本音でしょう。でもそれは、契約者の本音ではない気がしています。

それよりも
「事故のときに決して悔しい思いをしなくともいい」保険体系を考えても良いんではないでしょうかねえ。会社が大きそうだから大丈夫そうだとか、電話受付が印象が良かったから、という程度で左右されるのが本質的な選択ではないでしょう?

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