2009年1月7日水曜日

あけましておめでとうございます。

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。相変らずマイペースな更新ですが、ボチボチやっていこうかな、と思っております。

さて。昨年末から会う人ごとに「自動車業界は大変だねー」と慰められてしまいました。皆さん気にかけていただきありがとうございます。でも。
これはパーセントと金額と、という話になるのですが、例えば年間1000万円収入の人がいたとして。所得税か何からで40%の税引き分があったとしましょうか。すると残りが600万円になるわけです。
で、あるとき税金の控除どうのこうのの変更という事があり控除分が30パーセントになったとするとその差額は100万円にものぼる訳ですが、同じ割合で年収500万円の場合は50万円という事になるわけです。額面だけで言われれば50万円の差ではありますが、その印象は人によって、場面によって様々である訳で。
つまりは自分の場合そんなに手広い商売になっている訳ではないし、保険とクルマ関係というダブルインカム(言葉はかっこいいけどトータルはそれほどでもない)なので、まあ流行の言葉で言うと「リスクヘッジ」をしているということになるのか?パーセントといわれても元の金額や数値があっての話なので、元が少なきゃ「えへへ」という程度の被害額でもあるわけです。


そういうことはともかくとして、元ディーラー人としての感覚で最近の状況を見ていると、3月頃にもう一波乱あるだろうなーと。
というのは、自動車ディーラーって4月から延々溜め込んできた累積赤字を2~3月の増販時期に一気に取り戻すというサイクルを延々とやってきた業界のようなので、ここに来て赤字を埋めきれない所ってけっこうあるだろうな、と。聞くところによると12月頃の話では営業所目標数字の約半分も消化できるかどうか、という状況のようですからねえ。
おそらくは目標数字の実態としては本音8割、採算分岐6~7割というところでしょうから、半分というレベルは危険水域だろうな、と。そうでなくても国内販売は低迷しっぱなしな訳だし。メーカーとしても端から黒字化は諦めているだろうし、せめて足を引っ張らないで、とは思っていただろうけどドル箱である海外があの調子じゃあねえ。

イスラエルの戦争話が出ていますが「戦争ほどいい商売はない」という観点からすると、戦争するだけの体力がなくなってしまったアメリカの代わりにイスラエル自身が一発花火をあげようかと動き始めたのか?というのは根性の曲がりすぎた、穿った見方なのかなあ。

車の話に戻します。
今回の自動車業界全般に及んだ波乱は「新車が安すぎる」という事に尽きると思います。「嘘こけ、高けーよ」と言われそうですが、その実200万円クラスの車では諸経費分が40万円近くにのぼります。結局値引き分は税金の補填でしかなく、いくら値引きをかけても車輌本体価格以下の金額で車を買うことなど、下取車価格を考えない限りありえない話であると言うのが現実です。
ではその車輌本体の金額の内訳ですが、以前書いた通り、ディーラーへのメーカー卸価格は8掛程度です。仮に本体金額200万円とすれば仕入れは160万前後。この金額が工場出荷後3ヵ月後の手形でメーカーに入金される訳です。
仮にこの車が月5000台、モデル期間5年の生産計画だったとします。そうすると累計生産台数は30万台。この台数の売上で全てを賄わなくてはいけません。先ほどの出荷価格160万円の車で考えればトータル4800億円の売上ですが、これで全てを何とか工面しなくては自動車会社は赤字になってしまいます。開発費用は大体1000億とか2000億と言われます。仮に1000億としたって残りは3800億円しか残りません。これで車の材料費から人件費から広告費用や設備投資分やメーカーの儲け(純益)を出さなくてはいけないのです。
仮にこの半分がクルマにかけられる生産原価とすると1900億。とすれば1台あたり63万円強。1台当り約3万点の部品で構成されているといわれますから、平均部品単価は21円程度となってしまいます。この金額を見てどう思うかは人それぞれでしょうが、現実はこんなものです。メーカーの営業努力ってすごいと思います。ほんと。
逆に予想が大外れの方向に振れて売れてしまった場合。例えば初代のオデッセイとか。こんな時にはメーカーは笑いが止まりません。最初に計算してある必要経費は台数が増えたところで変わりませんから、売り上げ増はそのまま丸まる儲けとなるからです。当時のホンダも秘かに「潰れる」という噂すらあった経営状況でしたが、この一発で形勢逆転でした。今の「国内2位のメーカー」という称号も元を辿ればここが出発点(というか転換点)でしたね。あとは初代デミオとか初代FFファミリアも似た様な経緯だったと聞き及んでします。

今回の一斉減産の場合。元々想定していた償却金額が重くのしかかってきます。こうなれば形振り構っていられなくなるのは当然かな、と。派遣を切ろうが、広告効果に疑問があるようならば広告出稿を止めるとか。旗振り先導役としての経営陣の責任問題は当然としても、次の車の開発は既に進めているわけですし、次の給料日は迫ってくるし。出るものは出て行くわけですしね。

こういう流れを見るにつけ惜しいと思うのは「レクサス」の失敗です。部品一点の原価が10銭上がってもいいから必要な所には必要な金額を費やした、良質なコンセプトと、それに基づいた車を作り、1台1台丁寧に売る、というモデルを築きそこなっている訳ですからね。適正規模による適正利益、というスタイルを手にするチャンスだったハズなのに。蓋を開けてみればクルマにではなく飾り付けにお金がかかった、ただ単に利幅の大きな商品に仕立てられたクルマを「上質」という包装紙に包んで売るという、いかにも薄っぺらなものになってしまいました。
ノリタケのティーセットとかスナップオンで統一された工具とか、どうでもいい部分にコストをかけた店舗など見向きもされないのは、いわば予想された結果だったと思うのですがねえ。
自分もベンツC200を持っていますが、単に良質なクルマが欲しかっただけでイコール高額車というか、ありていに言うとクラウン・セルシオ・シーマ・セドリック・グロリアあたりの飾り立てられたお座敷列車のような、しかも周囲にも押しの利く車が欲しかった訳ではありません。まあこれらの車は結果的にはベンツの顔(グリル)もが表層的に採り入れられていますから同列の所謂「高級車」と周囲には認識されがちなのが残念ではありますが。

ある程度の生産規模でないと適正レベルの利潤すら出てこない、つまり更に更に増産を追い求めないと利潤を増やせないシステムは「減産」の一声で「食えない」状況になってしまいます。特に部品メーカーや孫請(2次)以下の下請けにとっては死活問題でしょう。

どこかの自動車雑誌に「新車金額」で販売する「レストアした中古車」を売る、という商売を目にしました。メーカーとしてはあんまり面白くない商売でしょうが、でも、レストアされるだけの『愛情』の対象とされるだけのクルマを作ってほしいという気持ちはあります。
以前、自動車評論家の舘内さんが「人数を集めて、こちら側の欲しい車をこちら側主導でメーカーに作ってもらう」という事を提唱していたことがあります。実例で言えば「クロネコヤマト」のウォークスルーバンですね。あれは一般販売もしてはいますが、元の企画はヤマト運送による持込企画です。「うちには何台の車があり、○年周期で代替をしています。年間代替台数は何台にのぼりますが、こういう車を作ってくれれば必ず年間何台買いますから作ってください」ということです。
よく耳にするのは「AE86」を再販してくれれば、というものだったりとか。でもまあ、ああいうクルマを欲しがる人は得てして「口ばっかり」という人が多いのできちんと前金で何割かはメーカーに渡さないと無理でしょうが。
何年か前に発表されたアルテッツアは惜しい企画だったと思うんですけどねえ。


まあ、いろいろ思うところの多い昨年末ではありました。なにはともあれ自分のできる範囲で今年もやっていきたいと思います。ほどほどにお付き合いくださいませ。

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