2009年11月12日木曜日

ハイブリッドの功罪

昨日は、来年の消費税支払いの為の前準備として「税理士の記帳指導」なるものを受けてきました。前回に引き続き第2回目になります。

さて、その四方山話の中で税理士の人に真顔で聞かれたのは「ハイブリットって本当に良い物なんですか?」ということでした。まあ、一般的にはそんな理解度なのか?という思いもありましたのでちょっとそのウンチクを。



ガソリンエンジンというのは、この間話題に出てきました「直噴ガソリン」の話でもないですが、「回転数一定での一定速運転」が一番効率が良くなります。
例えば時速100キロ程度での定速走行で必要とされる馬力は3~40馬力程度のようですが、その程度の力を一定に出し続けているだけならば、燃費はよくなって当たり前なわけです。一番効率が良い運転状態なんですから。

「リーンバーン(希薄燃焼)エンジン」などは、この一番良い状態の一定燃焼の運転状態時に「もっと薄いガソリンで済ませてしまおう」というものです。言い 方を変えると「失火寸前」といっても良いでしょう。ほとんど力を必要としないので、その程度の燃焼で良いですよね?という事です。
ちょっとアクセルを踏むとすぐに「ECO」インジゲーターが消えてしまうのはそのためです。「アクセルを踏む→もう少し力が欲しい、と判断する→ガソリンを増やす」となりますから。


燃費を良くするという事は、言葉を変えると「なるべくエンジンを動かさない・効率の良い所でしか使わない」という解釈も成り立ちます。これがハイブリッドのミソです。

モーターという動力装置は「ゼロ回転時に発生するトルクが一番大きい」という特性を持ちます。回転が上がるほど回転軸を回す力は落ちていきます。このため。「出足の時にはモーター」で走り出すほうがエネルギー効率はよくなります。
「一定速度以上になったらガソリンエンジン」の出番です。もっと力が欲しい時は「両方使います」。

プリウスの場合は「モーターで走る」「モーター+エンジンで走る」「エンジンで走る」「エンジンで走る+充電もする」「エンジンを止めて回生ブレーキで充電する」という様々なパターンをその時その時の判断で縦横に組み合わせて動いています。

インサイトの場合は「基本はガソリンエンジン」での走行で、「もうチョット」という時に「モーターがアシストする」という方式です。このため、ガソリンエンジンを「無理に回さなくても済む」という方式です。



燃費という観点からすると一番影響がでるのが「アクセルの踏み方」です。

スピードが乗ってくるのを感じつつ、ジワッとアクセルを踏み増していくのが一番ガソリン消費量が少ないのですが、理想と現実との乖離がここでもあります。

一つは、馬力競争です。
今でこそ車のエンジン出力の表記が「キロワット・馬力」並立表記になっていますが、昔は馬力表示のみでした。実際問題としては普段車に乗る分には「馬力」なんかよりも「トルク」の方がはるかに重要なんですけどね。
ただ「○○馬力」という表現は横並びで比較しやすい単位だったためか、長らくエンジン出力は馬力で表現され続け、また一つの指標として「100馬力」以上 と以下という線引きが出来てしまっていました。で営業上、この「最高出力100馬力以上」にするために妙に高回転型のエンジンになってしまい「低回転時の 力はスッカスカ」というエンジンが氾濫してしまいました。

低回転時の力がないエンジンは、アクセルを踏み込むしかありません。勢いアクセルの踏み方は乱暴になります。手っ取り早くエンジン回転数を上げるためには止むを得ません。
また軽自動車のように、車重に対してエンジンが小さい車では「とにかくアクセルを踏まなくては車が出て行かない」事が多いので、さらにアクセルの踏み方は乱暴になってしまいます。

もう一つは「オートマチック」の普及でしょう。
マニュアルミッションで、ギアチェンジがヘタクソなのは自分のせいになりますが、オートマチックでギアチェンジ時のショックが来るのは機械のせいとなります。

オートマチックの世界では「ギアチェンジを一瞬で終わらせる。但し、その時には一瞬だがシフトショックが出る。それに耐えうるように、機械そのものは頑丈 に・精巧に作る」方式と、「なるべくシフトショックが出ないよう、トルクコンバーターを滑らせながら変速をする。このため変速時間そのものは遅い。ただ、 機械に対する負担は少ないので、前者に比べ多少はお安くあげることが出来る」方式とがあります。もちろん前者がベンツ方式で後者の代表格は日本車でしょ う。

耐久性や金額、そしてシフトショックの有無は「高級感」の演出にもなりますので、後者の「シフトショックの少ないAT」がもてはやされることとなりました。
ただ、このATは「さらにアクセルワークに対する車の挙動」を判りにくくすることとなりました。

もう一つ、ここ最近の傾向として「車重の増加傾向」があります。
もちろん元々は安全装備の充実の為、ということに端を発しているのですが、それに加えここのところは快適装備の充実にも拍車がかかっているので、さらに車 が重くなってきています。もちろん重くなれば車の動きは鈍くなり、それをカバーする為にエンジンは大きく重くなり、アクセルの踏み方も大きくなりがちにな ります。困ったことです。


こうしたことなどが遠因となって、皆さんのアクセルワークが乱暴に、粗雑になってしまっている訳ですが、これを何とかしようという苦肉の策がハイブリッド、という側面もあります。

論点がずれているような気がするんですよね。実際。

そんなにCO2を減らしたいのなら、「アクセル開度一定で走行可能な道路に設計変更する」「極力、車の発進停止回数を減らすような道路設計」というインフラ設計が先にあるべきだと思うんですがね。
クルマ側にできることで言えば、「アクセルの踏み込みに対する反応をもっとダイレクトに感じるクルマとする」や「車の軽量化」でしょう。

ではドライバー側にできることは?
うーん。「下手な奴には自分でアクセルを踏ませない」とか?中には「動く道具でありさえしてくれれば自分で操作する領域は狭くても良い」とする方々も少なからずいらっしゃるような気もするんですが。とくに高齢者の方々とか。まあそれはともかく。


「エコ換え」などでは「新たな廃棄物(しかもリサイクルしにくい)を作り出すだけ」でしかありません。新製品を作るにも旧製品を廃棄するにもエネルギーはかかり、CO2は排出されるのですから。


どうもハイブリッドカーもギミック満載というか、ホンダ流「飛び道具」満載のクルマに成り下がってしまっているような気がしてなりません。出発点は良かったと思っているんですがねえ。

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