2010年5月3日月曜日

シートポジション

商売柄、色々な車に乗ります。フェラーリだ何だ、とかは無いですが。

ただ、色々な車に乗って近頃ホホウと感心してるのはVWです。流石によく考えてあるなあ、と。ベンツも悪くは無いですが、FR車というのはセンタートンネルが前方に向ってラッパ型に広がっていることが多いです。単純にそうなっている右ハンドル車の場合、設計段階でその辺をきちんと配慮しといてくれないと左足の置き場に少々迷うというか、落ち着かないというか。
酷いなと思ったのがレジアスとかグランドハイエース系。ものすごくお行儀よく座っている人ならいいかもしれませんが、フットレストがまっすぐな為に踏ん張れないんですよね。あれじゃあ。
ベンツの場合も元々左ハンドルで作っているので、右ハンドル車のフットレストの置き場に苦心の跡は伺えるのですが、こういう細かい所の辻褄が少々辛いですね。この点、FF車という利点もありますが、ルポは足の踏ん張りを効かすべく色々きちんと配慮をしているなあ、と。

日本の高額車の場合はあちらこちらの調節機構が全て電動で、しかも鍵を抜くと乗り降りしやすいようにシートが最後退してハンドルが上に跳ね上がり、なんて面白機能や、シート前後のリフターにヘッドレストの上下動、シートも背もたれは言うに及ばず、ランバーサポートやサイドサポートの開き加減の調節とか、シートベルトアンカーの上下動までモーターで動いたりもします。でも、悲しいことに調整機能が多い事としっくり来るポジションがあるかどうかとは別なんですね。実は。


隠れたベストセラー車であるハイエースというクルマが、キャブオーバーという設計を悪く言われ、衝突安全がクリアーできないという理由でやむなく現行型に世代交代しました。ただ、あれほどユーザーに支持されていた車も少ないのでは?と思っています。その圧倒的に支持された理由の一つに「疲れない」という点が良く挙げられていました。

その素性としてのキャブオーバー。
エンジンの上に座る、という着座姿勢が意図された物か偶然かはともかく、着座姿勢という事に関しては非常に理に適っていました。よく聞かれた言葉に「腰に負担が少ない」「腰痛が気にならない」というものがありました。着座姿勢が応接室によくあるソファータイプではなく、椅子のそれであったというところに理由があるのだろうと思っています。
ある意味、日本でセダンが人気が無いのは、こうした「人を座らせる」という部分で「本質的に快適でないクルマが多すぎる」事もあるのではと思うくらいです。

運転手をアップライトな姿勢で座らせシートバックをきちんと立てる。座面と床面との間隔を十分に取り、お尻だけではなく、太腿全体ががきちんと座面に当たるように、座面がきちんと太腿全体をサポートするように。肘の辺りで広さを感じるので、その付近だけは空間を抉って窮屈さを軽減する。ハンドルはきちんと操作が出来るように、なるべく手前に持ってこれるよう、ハンドルの軸位置をなるべく高めに持ってくる。シートの背面は腰付近だけでなくきちんと肩甲骨の所まできちんとサポートさせる。個人的にはショルダーサポートも欲しいけどこの辺はお好みで。

こうしたシートポジションを実現した車として印象深いのが初代ビッツです。

レカロが腰痛対策に良いとはよく言われることです。勿論シート形状のよさが第一なんですが、個人的な感想では「適度なポジションと腰・背中へのサポートで、運転中に腰が余計に振られる事が少ない」ところが効いているのかな、と思っています。



本質的に快適というか実用的な椅子は、意外に高額なものです。私の普段使いのアーロンチェアにしてもそうですし、オカムラのコンテッサとかも結構高額です。ただ、古巣である静岡トヨペットでもそうだったので自動車メーカーの人もそうなのかなあと勘繰るのですが、こういう事務所の椅子って安っすい事務椅子であることが多いような?それが所長用とかになるとキャスターの数が増えるとか、肘掛が付く、といった程度でそれが仮に社長用とかになっても革(合皮)張りのハイバックになるか否か、という程度であることが多いようです。少なくとも私の見た限りにおいては。確かこれは保険会社もそうだったかな。


何が言いたいのかというと。


別に表面が皮であろうがなかろうが、どうでもいいんですよね。きちんとした姿勢を保持してくれて、なおかつ疲れず、仕事に集中できるような姿勢をとらせてくれれば。革や合皮の椅子なんて蒸れるだけだし、座った瞬間冷たいから見掛け倒しの事が多い。

つまり、良いイスに座ったことがあるのかなあ、と。結局それがなければ、良い椅子の基準がないじゃあないですか。作る側からして。保険会社時代、あまりにも事務椅子が酷いので「自宅の椅子を持ち込んでもいいか?」って聞いた事ありましたもの。勿論却下されましたが。


電動シートなどというくだらない虚仮おどしの装備になんかより、もっと本質的なシートフレーム、着座姿勢の詰め、という部分にもっと時間とお金を掛けて欲しいです。これだけでクルマはものすごく変わります。ルポ如きに出来て日本車に出来ない訳が無いでしょう?


ちなみに、私が初めて「良いシートというものは良い物だ」と感動したのはR32のシートでした。で、初めて自分の車に社外品を持ち込んだのはCDチェンジャーでしたが、2番目に手を出した用品はレカロシートです。マークⅡにレカロのSR-3。惜しむらくはシートだけが突出してしまった、というところでしたね。

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