2009年3月9日月曜日

自己主張の代償

2/17の記事で採り上げた「被害者の立場」の事故のその後の顛末です。

結論から書いちゃうと、いまだに決着がついていません(事故そのものの発生日は11/4)
相手側(加害者側)からは後ほど「0:8」でお願いしたい旨の連絡が入りましたが、こちら側(被害者側)はやはり1:9でないと受け入れられない、とのことで平行線のままです。

保険会社としても、契約者がそういう意向なのであればとにかくそれをそのまま相手方に伝えつだけです。でも、相手側の状況としては特に示談を焦る要因も無く、これ以上譲歩しなくてはいけない修正要件(事故状況)も無い(だろうと思われる)ので、ちょっとやそっとでは進展はしないでしょう。僕もそう思っていますし、保険会社の担当者としてもそういう意見でした。

それでもと思って今日電話したのは「弁護士特約」がついている(つけてある)ので、弁護士特約を使って、弁護士の意見を契約者(被害者)に聞かせてあげたらどうでしょう?ということでした。それが納得の材料となるのであれば、というものでしたが保険会社社員曰く「例えそれで勝訴となっても4千円程度の賠償金額の違いでしかありませんから、この案件を受ける弁護士がいないでしょう」。まあ、そりゃあそうか。

事件の概要はかいつまんで言えば「一旦停止無視の交差点による車輌同士の接触事故」です。
こういうものを持ち出すのは面白くない気もするのですが仕方ない。こういうとき過失割合の判定に大概の保険会社で使われているのが「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の判定基準」という本です。ほぼ全ての公道上の事故における事故のパターン別に過失割合の妥当な線を定めているというか、過去の判例における判決例が網羅されている(らしい。実際の所は、全ての判例を見たわけではないのでそこまでは知りません。だけど、ほとんどの保険会社のサービスセンターではこれを使っています。)物です。
これによるとこの事故の基本過失は2:8です。つまりは直進してきている車が過失2割。一旦停止車線から進入してきたクルマが8割悪いということだそうです。仮に一旦停止のことを知らずに突っ込まれたとしても、突っ込まれていること自体が前提になっているので、その辺の事はすでに前提条件となっている、ということのようです。それで2:8ということなのだそうな。

これで黙っていては、というか、通常は「動いていれば最低2割の過失が生じて当然」という分かったような、しかも受け入れにくいことを散々言われて不承不承それを受け入れさせられる、というのがたいていの場合のパターンです。事実、自分自身もそういう条件を飲まされたことがあります。
ただ、自分自身もそういう面白くない解決案を呑まされたことがある当人として、「最低限相手に賠償金を払うのは面白くない」ということで相手過失割合8割:相手への賠償金ゼロというのが被害者として「面白くないこと」であるにせよ、最低、相手に対して溜飲を下げることのできる譲歩ラインだと思っています。で、当初はそれを本人に了承してもらい、話を進めさせていたわけです。
実際問題、それ以上に(2:8→1:9に)過失割合を修正させるには、相手方は保険会社の会社員である以上、その上の上司の印鑑をもらうべく、相応の説得事由が必要となります。つまりは「法律上妥当と思われる賠償責任割合の分を加害者に代わり保険会社が肩代わりする」のが建前である訳ですから。それは賠償責任範囲を超えているだろう、といわれればそれでおしまいなわけです。もちろん保険数理上も、それを前提にして(いるらしい)計算がなされている訳ですから。

今回、すったもんだの末「0:8」での妥結を相手に認めさせました。業界人内にしか通じないことなのかもしれませんが、これは被害者側の勝利です。相手側の賠償責任を放棄させた訳ですから、それだけでもなかなか稀有なことなのですが。もちろん、相手側の状況も見極めたうえで誘導した着地点でもあったわけですが。


さて。示談は今でもなされていないのですが、困るのは被害者に修理依頼を受けた修理業者です。今回はとある日産ディーラー。修理代金の20万円強の売掛金が4ヶ月も滞ったまま、今現在も入金を待ちわびている状況です。
車両保険に加入されていれば車両保険金の先払い制度でもって示談を待たずに入金がされているはずなのですが、それをしなかったのは契約者の判断ですし、こちらとしては散々車両保険の案内はしていました。
こうなると、1:9の自己主張に固執されるのなら早々に日産への修理代金を自分で支払っておいて、それからじっくり腰をすえるというのなら分かる話なのですが、どうもそれが理解できないようです。結果論としての被害者の持ち出し金額も1:9と0:8はほとんど変わらないんですが。まあ、言い出した側として引っ込みがつかなくなっているということもあるのでしょうけど。

0:8の示談が決着点だ、といって当初被害者の了解を得て、その旨保険会社に指示を出していたのは自分でした。だから、その条件を相手側に飲ませるまでは自分の責任範囲とは思っていましたので、関係ないこととはいえ自分が修理金額を建て替えて日産に払い込もうと思っていたこともあります。
ところが途中、0:8主張を退けられたことを被害者に説明しに行った時に「やはり1:9だ」と言い出されました。後日保険会社の担当員と被害者とで直接話をさせたところ「自分は0:8示談を了承したことはない」「柴田が勝手に言い出し事だ」と言っていたそうで。

この時点で修理代を建て替えてあげる気力も示談への情熱も失ってしまいました。まあ勝手にやってちょうだい、ということですね。ただ、そこまで自説にこだわるのならば日産への後始末はきちんとしてからやるべきなんでしょうけど、どうもねえ。

多分また月末近くなってから自分宛てに日産から電話が来るでしょうけど、困ったものです。

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