2009年6月3日水曜日

コンセプト

昨日は新型Eクラス(M・ベンツ)を検討中のお客さんのところにお伺いしていました。
話はいろいろな方向に及んでしまい、ベンツはこういうつくりになっているというヤナセのセールスからのお話であったり、今までのベンツ体験談であったり、内装色の好みの話であったりとお話は尽きず、結局2時半過ぎにお邪魔してから、そこを辞したのが7時近い時間になってしまっていました。まあよくもそこまで話題が尽きないものです。柴田の本来の用事は、そんな新型のEクラスが云々などという話ではもちろんなく、火災保険のお話だったんですが、4時間超の時間の内、本題は30分ほどでしかありませんでした。

基本的のその方は「ベンツの中から選ぶ」ということのようでした。ヤナセのサービス(メカニック)面についても特に気にはなっていない様子です。まあそういうことなら別にこちらもわざわざいうべきことはありません。
確かに車検費用は13~15万円ということでそこはヤナセ価格だなと思いました。同じ車重であれば特に整備費用に差はつけていないのでウチの場合Eクラスの車検総額は100,820円になります。そのうち税金分が74,570円(自賠責保険・印紙代・重量税合計)、車検整備基本金額は25,000円(+消費税)ですから、ヤナセの基本整備金額はやはり倍だな、と。まあ別にどうでもいいことですが。

途中、お話は「日本車は乗りにくい」などといったお話にも及びました。曰く「ハンドルの反応が妙にシャープで、適度なダルさ、というものがない。またアクセルの反応が鋭すぎて車速を一定に保つことが難しい、」などなど。
個人的な印象では、日本車(特にトヨタ車)では「静か・フラットライド・快適さ・仕上り(見栄え)品質」が最重要視される傾向がある、と思っています。つまり音は徹底的に遮音し、異音は極力潰す。乗り心地に関しては急な突き上げや揺れを極力押さえる。エアコンはきちっと効かせ、オーディオのバリエーションは豊富に、運転姿勢もお客様が望むならば極力ゆったりと座れるように。一番分かりやすい外装に傷一つあってはならず、内装もぴっちりとチリが合い、シートにほつれひとつ、シート表皮に目立つような傷ひとつあってはならない。というなんだか豪華応接セットのような方向を目指していうようです。
このため、高級車(高額車)に特にこういった姿勢は顕著であるような気がします。アクセルを踏んでもなんだか遠くでエンジンが唸っているなあというだけでイマイチ反応に乏しく、でも乱暴なアクセル操作をするとガツンと反応が返ってくる。車がどういう道を走っているのか、乗り心地が良すぎて(乗員にそうした情報を伝えなさ過ぎて)路面状況が把握しにくい、という感じ。快適さや仕上げ品質が高いのはそれに越したことはないのですが、どうも走る物体としてどう?という感じなのです。

ベンツではこうしている、として自慢されたのはステアリングの中立付近のギアの歯の切り方の感覚を広くしておき、一定確度以上の切れ角になると歯の感覚を狭くしてハンドルの切れ角における反応をシャープにしている、というものです。
まあその辺の真偽はともかく、でも気になるのは「いつも一斉に一辺倒」という習性といったらいいんでしょうか。ハンドルの操作力は軽ければ軽い方がいい、と言われれば無批判にとにかく軽い方向へ、とエスカレートして行き、行き着いた時には常に小指だけでハンドルが回せるというところまでいってしまいました。そこまで行って「やはりここまで来ると却って危険だ、やはり一定度の操舵力を必要とするくらいの方が安全だ、として今度はスピードの遅い時は軽く、スピードが乗ってきたら逆にハンドルは重く、なんて方向にまたまた収束していきました。次にはプジョーの乗り味が....、なんていってみたり燃費の追求や車輌の統合制御なども含めて最近は電動パワステに御執心のようです。
その他にもオートマチックなんかもそうですかね。多段化といえばみんな多段化してしまい元々3速だったのにオーバードライブギアを足して4速という所で落ち着きかけていたところに2000年ごろから5速6速と増えていき今では8速ATなんてものまである始末です。普段使われる速度域や必要とされるパワーを考えればそこまで必要ないはずなんですけどねえ。で、今度は燃費向上の切り札だなんて売り文句つきでCVTなんかもあったりしているわけです。
たしかにCVTはある意味究極の多段変速であるのでしょうが、あれ実際に運転すると気持ち悪いんですよねえ。燃費を気にして乗るんならとにかくアクセル開度一定でスピードにのるのを我慢の一手でクルマまかせでとなるのですが、で、そうしているとすぐ次の信号で捕まってしまいイライラはつのる一方になってしまいます。ついにはがっとアクセルを一踏みしてしまうわけですが、これで今までの我慢していた分の節約分は一気に吹き飛んでしまいもとの木阿弥になてしまうという。まあ、それでも少しは燃費は良くなるようではありますが。少しだけ。

なんかこう「こうしたい・ああしたい」というコンセプトが見えないんですよね。手段としての新技術は色々見え隠れするんですがそれをどう使うのか。または目的を明確に設定して今ある材料をどう組み合わせることで実現可能と出来そうなのか。
本当かどうか知りませんが、新車が出て2週間後には次のニューモデルの開発がスタートするのだとか。既に大体の次のモデルの発表時期は決まっているのですから(もちろん新型車を出す前に今回は何年のモデルサイクルで月の目標台数何台、トータル生産計画台数何台、というところから逆算して原価幾ら、減価償却幾ら、儲けはいくらで、研究開発費はここまでなんて計算をしてある)、スケジュールを逆算するとこれくらいには始めていないと間に合わないだろうし、一番目に見えない時期開発車輌の開発コンセプトを練る、なんて時間は削られまくるんだろうなあ。

悪く言われることの多いトヨタ車ですが、個人的に好きな車は何台かあります。初代エスティマ、初代セルシオ、初代MR2、初代プリウス、初代ヴィッツ。これらはトヨタ車の中にあって非常にコンセプトが明確な車たちです。プランニューモデルばかりであるが故に参考車がなく、おそらく開発者達の気苦労は計り知れないものであったでしょう。決して商売的に大成功した車ばかりではありませんが、こうした明確なコンセプトを持って生まれた車たちは、やはり一本芯の通ったものを感じます。

先代継承、キープコンセプト。確かに裁量の範囲は狭まっているのでしょうし、クリアーしなければいけないことは以前にもまして増えているのでしょう。
でも負けないで欲しいです。ここらで一発アドバルーンでない技術者の意地ともいうべきモノを魅せつけていただきたい所です。

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