2009年7月7日火曜日

エアバック

コロパパさんのエアバックに関する記事を目にしたあとの感想です。

当時も今も非常に残念に思うのは、トヨタでいうGOAの宣伝以前に行われた「エアバック」全能キャンペーンです。
当時日産の販売はボロボロでした。そんななか、販売のトヨタ、技術の日産とかつて言われていた日産は宣伝キャンペーンに手を染めました(今でもそういうキライはあるけど)。その中のひとつが「エアバックキャンペーン」です。
個人的な印象でいえば「エアバック」は諸刃の剣です。ドイツのようにこうだ、と言われれば素直に従うらしい、噂に聞くアウトバーンのきっちりとした走行速度による車線維持が守られる国民性ならいいのですが、少なくとも日本においてはそういう「統制好き」はお上だけのものであって、実際にはてんでバラバラというのが現実です。
少なくとも爆発物が目の前に鎮座しており、その所定の前提条件の下で所定の性能を発揮するように作られているエアバックは、その前提条件が変わってしまっては所期の性能を発揮できません。
そうした特性を持つエアバックを日産は「ついていれば安心」という誤解を生みやすいCMを作ってしまい、さらにはエアバックが付いていない車は安全ではないという、同業者からすると「ホントカヨ?」という非常に危うい状況を作り出してしまいました。当時の販売状況では「これエアバックついているの?」という言葉が多く聞かれたことからしてもその功罪は大きな物といわざるを得ないと思います。

正直な所、大多数の日本人のように、クルマを安楽スペースと考えているとしか思えない運転姿勢をとっている人たちにとってエアバックは危険なものでしかありません。
以前書いたことがあったかもしれませんが、エアバックはあくまでも「サブ レストレインスト システム」であって「メイン」の乗員拘束システムではありません。しっかりとシートベルトをし、なおかつシートの角度が21度前後の背もたれ角度を想定しているシステムです。誤解を恐れずに言えばその想定運転姿勢と搭乗条件を満たしていない場合はエアバックを作動させるべきではありませんし、それが守られない人のクルマには装着するべきではない、とすら思っています。。

似たような例として「サイドインパクトビーム」があります。横方向からの衝突に備えての乗員保護バーの装着の有無に関して、これは安全差別ではないか、という論調が当時ありました。こうした突き上げに対し自動車メーカーは即座にインパクトバーを標準装着とすることで対応しました。技術自体はあったということです。
ただ思うのは、ここまで信号機が異常な頻度で設置されている日本と、信号機の無い交差点が一般的らしいアメリカの交通事情での事故例を横並びで比較する神経は如何なものか?という事です。かえってインパクトバーがドアの内部に装着されていることで、内部に押し出されて変形した鉄板が乗員を攻撃してしまった、という事故例もあります。
とある装備されていることが万能の安全を保証する、という論調が行き過ぎてはしまいかと思うことは往々にしてあります。で、またそれは往々にしてCMであったり、大新聞様の安全キャンペーンによってメーカーが突き上げられる、という構図が多いような気もします。

メーカーも馬鹿じゃあありません。それが自社のイメージ向上になり、商品力向上につながると判断すれば多少コストが上昇することがあっても、その装置の標準装備化に躊躇することはありません。それこそ先に採り上げた日産の「エアバックキャンペーン」に対しトヨタは即座に「エアバック+ABS」の全車種標準装備化に着手しました。それもほとんど価格上昇の感覚を伴わない範囲でです。それまではエアバックひとつで35000円とか、ABSのオプションに10万円は払っていたのにです。

どうもメーカーという存在は信頼が薄いようです。らかすさんでも「標準装着のタイヤは安物で市販品のタイヤの方が高性能なのか?」という投稿内容がありましたが、それはまったくの誤解です。それはどこを目標として最適化されたタイヤであるのかという事であり、基本、標準装着のタイヤは納入価格は安く(500円程度らしい)抑えられているという事はあるにせよ、その内容はその装着車種専用のスペシャルチューニングタイヤです。持ちが悪いとかいうのは、設定性能の上位に「タイヤの初期性能の長期維持」が位置していないだけの事で、ほとんど全てが流れ作業で作られているタイヤで、それだけ低コスト(何処が?)なタイヤを作る方がかえってコスト高になるハズなんですが。要求項目がうるさくとも数がまとまる標準装着車のタイヤなら安く出しても勘定を合わせてくるはずですけどね。

一度だけマークⅡのライン装着品タイヤを部品として取ったことがありますが、なんと1本25,000円ほどもしてびっくりさせられたことがあります。メーカーとしても「それ1本だけ特別品を作るのは手間がかかる」わけです。

ベンツC200の取扱説明書を読んで感心させられた箇所のひとつに「エアバックキャンセルスイッチ」がありました。
基本的にはチャイルドシートというものは助手席に装着すべきでない、という認識が基本です。後席では子供がむずかるから、などという甘っちょろい言葉に惑わされることはなく、チャイルドシートは後ろの席に装着するのが基本なのです。子供がむずかるのなら、それに慣れさせる。子供を乗せるのならばより生存性の高い後席に乗せるのが親としての責任であるとの認識は必要です。
ただ、どうしても、という状況が生じることもあります。このためやむなく助手席にチャイルドシートをつけざるを得ないこともあるでしょう。ところが助手席はハンドルなどの、ダッシュボードとの間の構造物が無いため、運転席のエアバックが60リットルから80リットル程度の容量なのに対してその倍、120リットルからそれ以上の容量があります。ここにチャイルドシートを装着するのは危険です。特に後ろ向きで装着すると、衝撃の際にもろに赤ちゃんの後頭部にエアバックの衝撃がくる事も考えられるからです。
このときの為に装着してある助手席エアバックを作動しなくさせる為のスイッチがベンツにはありました。今のベンツにあるのかは知りませんけど。

かほど左様に自動車の周辺事情は複雑化しています。そこまでする必要があるのかはともかく、メーカーの企業努力・周辺事情への配慮には感心させられるところが多いものです。
ただ、意識的にせよ無意識的にせよ、それを白紙にしてしまっていることがありはしまいか、という自問自答は意義のあることのように思います。

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