2009年7月29日水曜日

黒表紙

トヨタ自動車には、愛知県の日進市に立派な研修施設があります。

自分は新車セールスとしてそちらに行った事があるだけなのですが、施設内で行われる研修課程にはメカニック研修あり営業所のマネージャー研修もあり、中にはDuo(トヨタディーラーがフォルクスワーゲンとアウディを売るために立ち上げた店舗)専門の研修もあり、今時ならばおそらくプリウスをはじめとする電気自動車整備資格取得研修(定期点検項目にはブレーキの項があり、回生ブレーキを備える一連のハイブリッド車種の点検に際して、トヨタとしてはこの講座の習得を必須としていた)なども頻繁に行われているのでしょう。
講師には全国各地のトヨタディラーから「この人は....」という現場の人(本人の意思とはまったく無関係)が選ばれ、これまた講師としての専門講習を受けた後に専任講師として何年かの間、愛知県の日進市に勤務することになります。もちろん研修施設に隣接した立派な寮完備の上の事(らしい)です。

さて。これまたトヨタには、この研修施設で編集された通称「黒表紙」と呼ばれるセールス教本が存在します。研修施設内ではこれを販売(3,000円~5,000円位したような気がします)もしていますが、基本的には関係者以外には門外不出の品とされているようです。
自分自身で買ったことはないのですが、浜松営業所に在籍当時、目をかけていただいていた当時の営業課長の方から「2冊持っているから......」という理由で「柴田君に古い方で悪いけどあげるよ」と、この黒表紙をありがたくもいただきました。残念ながら有玉営業所在籍時に、たまたまこの黒表紙の話題が出たことがあり、その際「僕も持っています」と言った途端、当時の営業所所長に「俺が預かっておく」と言われ取り上げられてしまいました。その際に「お前にはまだ早い」位のことは言われたような気もします。ちなみに僕に黒表紙をくれた営業課長と、奪っていった所長とは犬猿の仲であったようです。
その所長が転勤で有玉から去った時に取り返す機会はあったような気もしますが、その一件は当時すっかり忘れてしまっていました。ま、ともかく返す返すも残念なことです。


何でこんなことを枕詞として取り上げたかというと、今日あったことから改めて「プロとは?」という事を思ったからです。

昨日ほんのちょっとしたことから、取引業者との感情面での行き違いが生じました。きっかけは些細なことで、こちらが依頼した車検に関する仕上がり時間に関してです。
昨日の午前10時ごろ、自賠責証を業者の社長に渡しながら「(今日の)何時くらいに仕上がった車を引き取りにくればいいか」という事を尋ねました。そこの社長が言うには4時ごろには仕上がる、とのことでした。その言葉に対して「じゃあ4時ごろ過ぎに来ればいいんですね」と反問した所「仕上がったら電話をするから.....」と言われた為、柴田としても「じゃあ電話が来るのを待って、それから来ます」と答えた訳です。
で、その問題の昨日午後4時ごろ。電話が来ない。

5時になっても電話が来ない。

6時、7時、8時になっても電話が来ない。何か問題でもあったのか?と思います。

エンドユーザーへの納車は今週の末の予定(中古車の納車)ですので、まだ時間的余裕があることもあり待つこともできたのですが、それが今日の午前10時になっても電話が来ない。
で仕方なく昼前、11時過ぎになって電話を入れ「まだ作業が仕上がっていないのか?」と問い合わせたところ、逆に「昨日の4時過ぎに来るというので待っていたが来ないとはどういうわけだ」と逆に言われました。こちらに言わせれば「4時過ぎとは聞いていたが、電話を入れると言っていた以上、こちらとしても待っていた。遅いと思ったのなら電話の一本くらいあってもしかるべきなんじゃないの?」というところなんですが?おいおい。さてどっちがどっち?

良い、悪いという次元の問題でもないのですが、柴田的にはこの件については大げさに言えば「プロとして」という事と捉えています。
依頼者(柴田)としては車両搬入時に「入庫目的(納車前点検と車検)、やって欲しい事、こなして欲しい事」をきちんと伝え、それに対する報酬をきちんと滞りなく支払うことが義務だと思っています。基本的には車両引き上げ時に全車精算を完了しています。
では被依頼人、つまり仕事の請け人としてはどうか?受け入れに際して、引受内容に関する予想される問題点と、その補修に関する展開予想及び概算見積金額の提示は当然でしょう。修理に関する全権委任を受けているのですから、その作業の結果、支払いに直結する点検結果と、その追加作業に関わる途中経過報告も当たり前の事です。そして一番重要なのは「きちんと引渡しを終える」ことです。

このあたりが冒頭「黒表紙」の話題を出したことに繋がるのですが、黒表紙中にはこんな記載があります。それは「販売者と購買者との『意識高揚曲線』のズレ」です。つまりは、販売者(セールス)としては注文書を貰う時が一番気持ちの昂ぶる時であるのは理解しやすい所ではあります。ただ、これはあくまで販売の側の話であって、購買者(お客さん)としてはもちろん車を注文する時も気持ちが昂ぶるのですが、更なるピークが後半に控えており、それは納車のときに頂点に達する、というものです。これを忘れてはなりません。無事商品を納めて、売上を回収して、初めて仕事が完結するのです。作業の完了が仕事の完了ではありません。
で、またこの業者。こういう類いの「電話連絡に関する感覚」が鈍く(と言うか一般的にメカニックという職種がこの手の感覚に鈍いような気がします)、少なくともこの手の行き違いが今までも一度や二度じゃあない、というところもミソです。

コロパパさんの日誌に「出来の悪い医者」というシリーズがあります。私的な解釈でいえば、そこに登場する「出来の悪い医師」たちは「今日から医者になりました」と宣言しつつも「引き受けもできず、状況判断も出来ない(しない)。もちろん予想される経過の洞察も出来なければ、患者さんの社会復帰までもが覚束ない」、プロ失格と映ります。いわば「売上(利益)だけを掠める」輩です。
表面上の「医師」という資格に必要な最低限の経歴は積んだかもしれませんが、プロとしての「医師」を自称する(それ以前のこともあるようではありますが)には十分でない箇所が多々見受けられる、と言い換えてもいいでしょうか。

世間様的には「異業種参入」という事が珍しくないご時勢です。クルマ屋しかり、保険屋しかり。個人的にはその商売の屋号を名乗るにふさわしかるべくありたい、とは思っているつもりではあります。ま、なかなか伝わりにくく堅苦しい表現になりやすい事柄でもありますんで、普段は内に秘めているだけなんですが。
例えば、最近業績不振が叫ばれている業種(含む政治家・公務員)の方々、人様のことは決して言えた義理ではありませんが、それでもプロとしての報酬をいただくに値する(その額面も含めて)仕事を果たしている、と他人様に思っていただける仕事ぶりかどうか、そっと胸に手を当ててる一時があってもいいのではないでしょうか。

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